積み重ねた職人の工夫 -上総掘り-(平成18年4月号/2006)
印刷用ページを表示する 掲載日:2020年3月6日更新
地中から湧きあがる豊かな水。市内の1300カ所以上で確認されている自噴井(じふんせい)の多くは、上総掘りで掘られたものです。掘削の足場は、大きなヒゴ車が印象的な、独特の形で知られています。
上総掘りは、明治時代中頃、糠田の池田徳蔵や俵田の大村安之助などの職人が工夫を重ねて完成させた技術です。鉄管に竹ヒゴをつなげ、 2、3人で千メートルをも掘削できるため、急速に全国に広がり、水や石油、温泉の恵みをもたらしました。やがて、後の掘削技術に影響を与えながら、その役割を終えていきます。
しかし、国際協力や環境、民俗学の視点から、再びこの技術が注目を集めています。平成18年には、上総掘り技術伝承研究会の保護・伝承する「上総掘りの技術」が、国の重要無形民俗文化財に指定されました。「民俗技術」という分野で初めての指定です。
「技術」とは別に、「上掘総掘りの用具」はすでに昭和35年に重要有形民俗文化財となっています。指定されているのは、現在、木更津市郷土博物館金のすずに保存されている資料群で、このうち俵田の内田傳重郎が寄贈した用具は、上総掘り成立の過程を物語る貴重なものといえます。
上総掘りについては、君津市発行の本『なるほど水と上総掘り』や『君津市史』の中で、詳しく紹介されています。
文:久留里城址資料館