受け継がれる伝統の技 雨城楊枝(うじょうようじ) (平成18年6月号/2006)
印刷用ページを表示する 掲載日:2020年4月28日更新
城の完成後「雨が3日に一度降った」という伝説がある久留里城。別名を雨城といいます。その名にちなんだ伝統工芸品の「雨城楊枝」は、和菓子に添える「菓子切り」などの細工楊枝です。
材料のクロモジはクスノキ科の植物で、芳香があります。良質のクロモジが手に入る久留里は、かつて楊枝の一大生地で、口の衛生を保つためのつま楊枝や、ふさ楊枝が作られていました。久留里藩の武士が内職で削ったとの伝承もありますが、明治以降に特に生産が増えています。大正期には周辺の500戸程が製造に携わり、製品は仲買業者を通じて、日本橋の老舗「さるや」などに納められていました。
青柳の森家では、森啓蔵の代に仲買を始めています。次の当主の安蔵は、着物の帯留の形をヒントに、さまざまなデザインの細工楊枝を作りました。三代目の光慶(故人)は、その技術を受け継ぎ「雨城楊枝」の銘で製作を続け、「現代の名工」などに選ばれました。現在は森隆夫さんが二代目森光慶として活躍され、「千葉県伝統的工芸品<外部リンク>」に指定されています。
さて、写真は久留里城址資料館に展示中(※開館日注意)の雨城揚枝の一部です。のし、松、鉄砲、うなぎなど、美しい細工が施された楊枝に、茶席で使う箸も添えられています。左下には、先ほど文中で登場したふさ楊枝(写真では「総ようじ」/材料はヤナギ)があります。この正体は、昔の歯ブラシです。
文 :久留里城址資料館
写真:「雨城楊枝」森光慶作 久留里城址資料館蔵