郷里の人を彫る「安西順一」(平成18年10月号/2006)
印刷用ページを表示する 掲載日:2020年3月12日更新
みなさんは3本指で動かす指人形、「ギニョール」で遊んだことはありますか?昭和初期、この人形を作った工房が青葉高校付近にありました。農家の副業に美術品の産業化を試みた全国的な「農民美術」の活動。その小櫃の生産組合が、日本でまだ珍しかった指人形などを生産したのです。
この活動に影響を受けた彫刻家、安西順一をご紹介しましょう。明治41年、上新田に生まれた安西は、近所の農民美術生産組合で、木を使った人形作りに出会います。やがて山本鼎(やまもとかなえ/洋画家)が主宰する長野県本部の指導者謀習会に参加していくのです。
また、後藤忠明(ごとうちゅうめい/宮彫師みやぼりし)に建築影刻を、関野聖雲(せきのせいうん/東京美術学校教授)に近代彫刻を学びました。日展には昭和13年の初入選以来15回入選。千葉市に移り住み、 千葉県美術会理事などを務めました。
さて、写真は小櫃公民館にあるブロンズ像「豊穣(ほうじょう)」です。ノミ打ちの跡を残す独特の作風。手ぬぐいをかぶり、正面を向いて立つ姿の力強さ。豊かな実りの情景が浮かびます。働く農婦の姿は、安西の好んだモチーフでしたが、作品の根底には、郷里の記憶があったのかもしれません。
安西の作品は、千菜県立美術館にも収蔵されていますが、市役所のロビーや、千葉市立郷土博物館(※開館日注意)などでも見ることができます。
文 :久留里城址資料館
写真:豊穣(安西順一作)小櫃公民館蔵